「更年期」は我慢するものじゃない。女性が健やかに働き続けるための「フェムテック」と品川区の役割

こんにちは。「品川区民とつくる未来」代表の、新井さとこです。

  • 最近、急に汗が止まらなくなる
  • 理由もないのにイライラして、家族にあたってしまい自己嫌悪
  • 会議中なのに、ひどい頭痛とめまいで集中できない
  • こんな状態で、この先も仕事を続けていけるんだろうか

40代半ばから50代にかけて、こうした心身の不調に悩む女性は少なくありません。いわゆる「更年期症状」です。しかし、長らくこの問題は「個人的なもの」「我慢すべきもの」「いつかは終わるもの」として、公の場で語られることはありませんでした。

辛さを訴えても「気のせい」「みんなそうだから」と片付けられてしまう。その結果、多くの女性が、キャリアや自分らしさを諦めるしかない状況に追い込まれてきました。私は、この「沈黙の我慢」を強いる社会の空気を変えたい。更年期の不調は、個人の根性論で乗り越えるものではありません。

女性の健康課題は、社会全体で支え、解決すべき「公共の課題」で、そして今、この課題に光を当てる新しいテクノロジーの波が来ています。

それが「フェムテック(FemTech)」です。

今日は、女性が健やかに働き続けるために、なぜ「フェムテック」が必要なのか、そして私たち品川区が果たすべき役割について、私の考えをお伝えします。

1. 「更年期離職」という静かなる経済損失

まず、なぜ今「更年期」が社会課題なのでしょうか。それは、女性の社会進出が進んだ今、更年期症状が「労働力の損失」という形で、社会経済全体に大きな影響を与えているからです。女性が更年期を迎える45歳~55歳は、職場においてどのような時期でしょうか。多くの女性が、長年の経験を活かして管理職としてチームを率いたり、専門職として最も脂が乗ったりする、まさに「キャリアの集大成」とも言える重要な時期です。

あるいは、子育てが一段落し「これからもう一度、本格的に働きたい」と意欲を燃やす時期でもあります。しかし、この最も重要な時期に更年期症状が直撃します。

  • ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)
  • 倦怠感、不眠、めまい
  • 気分の落ち込み、不安感、イライラ
  • 関節痛、頻尿

こうした症状は、本人の努力や気合とは関係なく、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によって引き起こされます。症状が重い場合、仕事のパフォーマンスは著しく低下します。

大事なプレゼン中に汗が止まらない
不眠で頭が回らず、単純なミスを繰り返す
イライラしてしまい、部下との関係がギクシャクする

周囲の理解が得られなければ「管理職失格だ」「やる気がない」と見なされ、昇進を諦めたり、降格を受け入れたりするケースもあります。そして、最も深刻なのが「更年期離職」です。

  • これ以上、職場に迷惑はかけられない
  • 体調不良のまま働き続ける自信がない

そう言って、多くの有能な女性たちが、不本意ながらキャリアを手放しているのです。ある調査(※)によれば、更年期症状による日本国内の経済損失は、年間で数千億円規模にのぼるとも試算されています。(※参考:経済産業省の調査など)

これは、個人の人生の損失であると同時に、企業にとっても、そして「働く街」である品川区にとっても、計り知れない損失です。私たちは、この「静かなる離職」をこれ以上見過ごしてはならないと思います。

2. 希望の光「フェムテック」とは何か?

この根深い課題に対し近年、大きな希望の光が差し込んでいます。

それが「フェムテック(FemTech)」です。「フェムテック」とは、「Female(女性)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。女性特有の健康課題(月経、妊娠、不妊、産後ケア、そして更年期など)を、テクノロジーの力で解決する製品やサービスのことを指します。言葉は新しいですが、皆さんも既に身近なものを使っているかもしれません。

  • 月経周期や体調を記録するアプリ
  • オンラインで医師の診察やピルの処方を受けられるサービス
  • 快適性を追求した吸水ショーツや月経カップ
  • デリケートゾーン専用のケア製品

これら全てがフェムテックです。では、フェムテックは「更年期」の悩みにどう応えてくれるのでしょうか。

  • ①「自分の状態」を客観的に知る
    更年期症状は多岐にわたり「なんとなく不調」と感じることが多いため、自分でも原因が分かりにくいものです。体調管理アプリを使えば、日々の症状(ホットフラッシュの回数、気分の浮き沈み、睡眠の質など)を記録・可視化できます。「私の不調は、ホルモンの変動と連動しているかもしれない」と客観的に把握することは、対策の第一歩になります。
  • ②「医療へのアクセス」を劇的に改善する
    「婦人科に行くのはハードルが高い」「忙しくて病院に行く時間がない」という女性は多いです。フェムテックの「オンライン診療サービス」を使えば、スマホ一つで、自宅や職場から専門医に相談できます。HRT(ホルモン補充療法)や漢方薬の処方、サプリメントの相談などが、格段に身近になります。
  • ③「セルフケア」の質を高める
    フェムテックは、医療だけでなく、日常のケアも進化させています。例えば、更年期特有の「膣の乾燥」や「尿漏れ」といった、人に相談しにくい悩み。これらに対応する高機能なケア製品や骨盤底筋トレーニング機器なども、フェムテックの一部です。

フェムテックは、これまで女性が「個人的な悩み」として抱え込み、我慢するしかなかった不調を「テクノロジーで解決できる課題」へと変えてくれる強力なツールなのです。

3. 品川区が「フェムテック支援」に取り組むべき3つの理由

しかし、素晴らしい技術も知られなければ使われなければ意味がありません。現状、フェムテックには大きな「壁」があります。

  • 「情報の壁」:そもそもフェムテックを知らない。どれが自分に合うか分からない。
  • 「経済の壁」:良い製品やサービスはまだ高価で、保険適用外も多い。
  • 「社会の壁」:職場で「更年期」や「フェムテック」という言葉を出すこと自体がためらわれる。

この「壁」を取り払い、誰もが必要な支援にアクセスできるようにすることこそ行政の役割です。特に働く女性が多く、先進的な企業が集積する品川区は、日本で最も「フェムテック支援」を推進すべき街だと私は考えます。

4. 新井さとこが提案する「品川区の役割」3つの具体策

品川区が「女性が健康不安なく、輝き続けられる街」になるために。私は、以下の3つの支援策を「品川区フェムテック・サポート・プログラム」として具体的に考えてみたいと思います。

提案1:『知る』支援(正しい知識と理解の普及)

まず、知ることから始めます。「更年期は我慢しなくていい」「新しい選択肢がある」という事実を、区民全体で共有します。

  • 全区民・全企業への「更年期リテラシー」向上
    品川区の広報誌やウェブサイト、保健センターで「更年期とは何か」「HRT(ホルモン補充療法)とは何か」「フェムテックで何ができるか」といった具体的かつ最新の医療情報を発信します。特に重要なのが、企業への働きかけです。区内企業と連携し、従業員(特に管理職や男性従業員)向けの「女性の健康とフェムテック」に関する理解促進セミナーやeラーニングの実施を、区が支援します。「部下の体調不良の原因が更年期かもしれない」と知っているだけで、職場のコミュニケーションは変わります。
  • 「体験」の場の提供
    言葉だけでは伝わりません。区の施設(保健センターや区民会館など)で「フェムテック体験会」を開催します。吸水ショーツやデリケートゾーンケア製品に実際に触れたり、オンライン診療サービスをデモンストレーションしたりする場を提供し、「よく分からないもの」から「身近なもの」へ変えていきます。

提案2:『試す』支援(経済的ハードルの解消)

良いものだと分かっても高価では試せません。経済状況によって健康が左右されることがあってはなりません。

  • 「品川区フェムテック・クーポン(仮称)」の導入
    前回の「リスキリング」の記事でも提案した「バウチャー制度」の健康版です。品川区民(特に更年期世代の女性)に対し、フェムテック製品やオンライン診療、専門家によるカウンセリング、漢方相談などに利用できるクーポン券を配布します。「自分のお金で試すのは勇気がいるけれど、クーポンがあるなら」と、最初の一歩を踏み出すきっかけを区が作ります。
  • 公共施設での環境整備
    区役所、図書館、スポーツセンターなど、品川区の公共施設の女性トイレに、質の良い生理用品や吸水ショーツのサンプル、デリケートゾーンケア製品などを試験的に設置します。「公共の場」が女性の健康を当たり前にサポートする姿勢を見せることが社会全体の意識変革につながります。

提案3:『繋ぐ』支援(孤立させない相談体制)

「この不調、どこに相談すればいいの?」という不安を解消します。

  • 「女性の健康ワンストップ相談窓口」の設置
    保健センターや区の相談窓口に、更年期やフェムテックに関する専門知識を持った相談員(保健師、助産師など)を配置します。単に話を聞くだけでなく「あなたの症状なら、このアプリが合うかもしれません」「区内でHRTに積極的なのは、この病院です」と、具体的なフェムテックサービスや専門医療機関へ『繋ぐ』役割を担います。
  • 地域の専門家とフェムテック企業の連携促進
    品川区がハブとなり、区内の婦人科医、漢方医、薬剤師、カウンセラーと、優れたフェムテック企業とのネットワークを構築します。アナログな地域の「かかりつけ医」と、デジタルな「フェムテック」が連携することで、切れ目のないサポート体制が実現できます。

5. 「我慢」から「健やか」へ。品川区の未来

更年期は、けっして「女性の終わり」ではありません。

閉経後の数十年間を、いかに健康で自分らしく生きるか。そのための「身体の準備期間」です。この大切な時期を「辛いだけのトンネル」にしてはいけません。テクノロジー(フェムテック)という新しい地図と、行政(品川区)というコンパスがあれば、それは「自分を見つめ直し、健やかに次のステージへ向かう期間」に変えることができます。

  • 女性が年齢による身体の変化を恐れず不安なく働き、笑い、活躍し続けられる社会。
  • それこそが品川区の真の豊かさであり活力の源泉です。

「品川区民とつくる未来」は、女性たちが「我慢」を強いられることなく、一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できる品川区の実現に向けて活動していけたらと思っております。

あなたのその不調は決してあなたのせいではありません。
その声をどうか私に聞かせてください。

あなたのその不調は決してあなたのせいではありません。
その声をどうか私に聞かせてください。

一緒に誰もが健やかに生きられる品川区をつくっていきましょう。

品川区民とつくる未来 代表 新井さとこ

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