こんにちは。「品川区民とつくる未来」代表の、新井さとこです。
この街で暮らす中で、DV(配偶者などからの暴力)や、予期せぬ失業、家庭の事情などで、心身ともに追い詰められ、安全な居場所さえ失いかけている女性たちがいます。
「今夜寝る場所がない」「これ以上、夫と同じ空間にいるのは命の危険を感じる」
そんな悲痛な声は、私たちのすぐ隣から聞こえてくるかもしれません。品川区には、そうした危機的な状況にある女性たちを守るための女性支援、大切な公的サービスが存在します。今回は、その命綱ともいえる支援、特に「一時保護」の制度について、その内容と、私たちが向き合うべき課題についてお話ししたいと思います。
まずはここへ連絡を。あなたの安全を守るための相談窓口
「一時保護」を受けるためには、まず専門の相談窓口へ連絡することが第一歩です。施設の場所は、安全を守るために公開されていません。必ず、以下の窓口に相談してください。プライバシーは固く守られます。
- DVが主な理由の場合:品川区配偶者暴力相談支援センター(DV相談)
専門の相談員が話を聞き、危険が迫っていると判断されれば、安全な場所への避難(一時保護)を調整してくれます。 - 電話番号:03-5479-4104 (平日 午前9時~午後5時)
- 夜間・休日など緊急の場合:東京都女性相談センター
24時間365日、いつでも相談可能です。緊急の保護が必要な場合に対応してくれます。 - 電話番号:03-5261-3110 (24時間対応)
- 貧困や生活困窮が主な理由の場合:暮らし・しごと応援センター
DVだけでなく、住まいを失った、失いそうになっているなど、生活全般の困りごとを相談できます。 - 電話番号:03-6421-7299 (平日 午前8時30分~午後5時)
「一時保護」とは、どんな場所?
相談の結果、緊急の保護が必要だと判断されると、「一時保護所(シェルター)」と呼ばれる施設に入ることができます。そこは、単に雨露をしのぐ場所ではありません。
- 心と体を休める、安全な空間
何よりもまず、加害者から物理的に隔離された安全な環境で、暴力の恐怖から解放されます。栄養のある食事と温かい寝床が提供され、心身の疲労を回復するための時間を持つことができます。 - これからの生活を立て直すための「作戦基地」
滞在中は、専門の相談員が今後の生活について一緒に考えてくれます。公営住宅の申し込み、仕事探し、法的な手続き(離婚調停や保護命令など)、子どもの転校手続きなど、一人では抱えきれない複雑な問題を整理し、自立に向けた準備を進めるための拠点となります。
この「一時保護」は、絶望の淵にいる女性にとって、文字通り命を繋ぎ、再出発への希望を見出すための、不可欠なセーフティネットなのです。
支援の先にある、私たちが向き合うべき「課題」
しかし、これらの制度をもってしても、まだ解決すべき多くの課題が残されているのも事実です。支援の現場や当事者の方々から、私は以下のような声を聞いています。
- 課題①:支援の「入口」が、まだ遠い
そもそも、こうした相談窓口の存在を知らない方が、まだたくさんいます。また、長年の暴力によって精神的に追い詰められ、「自分が悪いんだ」と思い込み、助けを求める気力さえ失っている方も少なくありません。どうすれば、本当に支援が必要な人に、この情報を届けられるのか。これは、行政だけでなく、私たち地域社会全体の課題です。 - 課題②:「一時」の保護から、自立した生活への高い壁
一時保護の期間は、原則として数週間から数ヶ月です。その間に、住まいと仕事を見つけ、完全に自立した生活を始めるのは、特に小さな子どもを抱えた女性にとっては、極めて困難な道のりです。退所後の生活が不安定なため、結果的に加害者の元に戻らざるを得ないケースも後を絶ちません。保護期間中の支援だけでなく、退所後も継続して寄り添う「伴走型」の支援の拡充が、強く求められています。 - 課題③:多様化する困難への対応
DVの問題は、経済的な困窮、精神的な疾患、子どもの問題など、複数の困難が複雑に絡み合っていることがほとんどです。また、外国籍の女性や、性的マイノリティの方々など、特別な配慮が必要なケースも増えています。一人ひとりの状況に合わせた、よりきめ細やかで柔軟な支援体制の構築が急務です。
あなたは、一人ではありません
どのような理由があっても、暴力が許されることは決してありません。経済的な理由で、尊厳が脅かされていいはずがありません。もし、あなたやあなたの周りの誰かが困難な状況にいるのなら、どうか一人で抱え込まず、専門の窓口に助けを求めてください。
そして私たち「品川区民とつくる未来」は、このセーフティネットから、誰一人こぼれ落ちることのない社会を目指し、現場の声を聴き、より実効性のある支援が実現するよう、各方面に働きかけ続けていきたいと思います。
品川区民とつくる未来 代表 新井さとこ
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