第一子保育料無償化へ!アレルギーの子を育てる当事者として語る品川区の保育のこれまでと未来。

こんにちは。「品川区民とつくる未来」代表の、新井さとこです。

1. はじめに

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、子育て中のパパさん、ママさん、そして品川区の未来を想うすべての皆さんにとって、本当に大きな、そして心から嬉しいニュースが正式に発表されました。すでにご存じの方も多いと思いますが、品川区の認可保育園の保育料が、来年2025年9月から、ついに第一子も無償化されることになったのです。

この知らせを聞いた時、一人の母親として、そしてこの街の未来を考える一人の人間として、胸が熱くなるのを抑えられませんでした。私の元にも、「さとこさん、ついにですね!」「うちの子も対象になりますか?」といった興奮気味のメッセージやお問い合わせを頂いております。

これまでも品川区は、国が定めた3歳から5歳までの無償化に加え、区の独自策として第二子の保育料を無償化してきました。しかし、今回「第一子」まで対象を広げたことの意義は、計り知れないほど大きいと私は感じています。

実は、私にも一人、大切な子どもがいます。今でこそ元気に育ってくれていますが、幼い頃は重い食物アレルギーがあり、子育てはまさに試行錯誤と不安の連続でした。保育園に預ける際には、細かなアレルギー対応をお願いし、毎日のお弁当作りや、いつアレルギー症状が出るかもしれないという緊張感と常に隣り合わせの日々。たった一人の子育てですら、「こんなにも大変なのか」と、何度も心が折れそうになったことを、今でも鮮明に覚えています。

だからこそ、保育園は単に子どもを預ける場所ではなく、親にとっても社会との繋がりを保ち、精神的な支えを得るための、かけがえのない「ライフライン」なのだと痛感しています。

今回の「第一子無償化」という大きな節目に、私自身の経験も踏まえながら、品川区の保育がこれまでどのような道を歩んできたのか、この歴史的な一歩が私たちの暮らしや地域の未来をどう変えていくのか。そして、私たちが本当に目指すべき「子育てしやすい街」とは何なのか。皆さんと一緒に、少し深く、そして熱く、語り合ってみたいと思います。


【第1章】過去(Past):高額な保育料と「見えない壁」が存在した時代

まず、少しだけ時計の針を戻してみましょう。「保育園の無償化」が、夢物語ではなく現実の政策として動き出したのは、2019年10月のことでした。消費税率の引き上げと同時に、国の重要政策として「幼児教育・保育の無償化」がスタート。これにより、3歳から5歳までの子どもたちの保育料が、全国一律で無償となりました。

これは間違いなく、子育て支援における歴史的な前進でした。幼稚園や保育園に通う子どもを持つ多くの家庭が、その恩恵を実感したはずです。

しかし、その一方で、子育て世代が最も経済的な負担を感じる時期、つまり0歳から2歳児の保育料については、「住民税非課税世帯のみ」 という非常に限定的な無償化に留まりました。多くの共働き世帯は、この制度の対象外。月々5万円、6万円、世帯収入によってはそれ以上にもなる保育料を、家計の中から捻出しなければなりませんでした。

私自身、子育てをしながら痛感したのは、この時期の経済的・精神的負担の大きさです。特にアレルギーを持つ子どもの場合、特別な食事の準備や通院など、目に見えないコストや時間がかかります。「仕事を続けたい、でも子どものそばにいてあげたい。何より、この保育料を払い続けられるだろうか…」。そんな葛藤を抱えている親御さんは、決して少なくなかったはずです。

このような国の制度に対し、品川区は早くから独自の支援策を打ち出してきました。特に画期的だったのが、国の制度に先駆けて、第二子の保育料を所得制限なしで無償化したことです。これは「2人目の壁」を感じていた多くの家庭にとって、まさに福音とも言える制度でした。品川区の「子育てを応援する」という強い意志の表れであり、私はこの決断を心から評価しています。

それでもなお、私たちが見過ごすことのできない「壁」が残っていました。それが、第一子の保育料です。

当たり前のことですが、すべての子育ては「第一子」から始まります。初めての育児に奮闘し、キャリアと子育ての両立に悩み、精神的にも経済的にも最も余裕がない時期。その時期に、最も重い負担がかかる構造になっていたのです。

「共働きで頑張って世帯収入が上がると、その分保育料も高くなってしまう」という所得連動の仕組み。これは、働く意欲やキャリアアップへの挑戦を、間接的に妨げてしまう「勤労意欲の壁」とも言えるものでした。一生懸命働いた結果、手元に残るお金が思ったほど増えない。そんな状況に、やるせない気持ちを抱いた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

この「第一子の壁」は、単なる経済的な問題に留まりません。「2人目も欲しいけれど、まずはこの子の保育料を払い終えてから…」と、家族計画にまで影響を及ぼす、心理的な大きな壁として存在し続けていたのです。


【第2章】現在(Present):すべての家庭を支えるという、品川区の歴史的決断

そうした長い道のりを経て、私たちは今、歴史的な転換点に立っています。2025年9月1日、品川区はついに、この最も厚く、そして高い壁であった「第一子の保育料」を、所得制限を設けずに無償化することを決断しました。

この決断がどれほど大きな意味を持つか、言葉で表現するのは簡単ではありません。これは、単なる「子育て支援の拡充」という言葉で片付けられるものではないのです。品川区が区民に対して、「経済的な状況にかかわらず、この街で子育てをするすべての家庭を、地域全体で支えます」 と、高らかに宣言したことに他なりません。

これまでのように「所得が低い家庭を支援する」という福祉的な視点から一歩踏み出し、「子育てそのものが社会にとって価値ある営みであり、その負担は社会全体で分かち合うべきである」という、新しい時代の哲学を示したのだと、私は解釈しています。

この背景には、品川区が長年にわたり、待機児童問題の解消に真摯に取り組んできた努力の積み重ねがあります。保育園の数を増やし、定員を拡大する。その地道な努力が実を結び、「預けたくても預けられない」という状況が大きく改善された今だからこそ、「量の確保」から「負担の軽減」、そして「質の向上」へと、ステージを移すことができたのです。

私自身、アレルギーを持つ我が子の育児を通して、「誰かに頼ること」の大切さを学びました。親が一人で、あるいは一家庭だけで子育てのすべてを背負うには、現代社会はあまりにも複雑です。保育園は、そんな親たちにとって、子どもたちの安全な育ちの場であると同時に、専門家である保育士さんに悩みを相談したり、同じように子育てに奮闘する親同士が繋がったりできる、不可欠なコミュニティ拠点でもあります。

その入り口が、経済的な理由でためらわれることがなくなる。すべての子どもたちが、等しく質の高い保育を受けるチャンスを得られる。これは、子どもたちの未来の可能性を広げるだけでなく、親が安心して働き、自己実現を追求できる社会、すなわち、より豊かで活力ある品川区の未来へと繋がっていくはずです。


【第3章】未来(Future):無償化の先へ。私たちが本当に目指すもの

さて、保育料という大きなハードルが取り払われた今、私たちの視線は、その先の未来へと向けられなければなりません。無償化はゴールではなく、真の「子育て先進区」を実現するための、新たなスタートラインです。

これから私たちが向き合うべき課題は、保育の「質」の向上と、子育て支援の「多様性」の確保です。

1. 一人ひとりの子どもに寄り添う「保育の質」の追求

保育料が無償になっても、親の願いはただ一つ、「我が子が園で安全に、そして心豊かに過ごしてほしい」ということに尽きます。これを実現するためには、現場で子どもたちと向き合う保育士さんの存在が何よりも重要です。

しかし、残念ながら保育士さんの仕事は、その専門性や責任の重さに見合った待遇が十分に確保されているとは言えない状況が続いています。保育士さんが心と身体に余裕を持って、笑顔で子どもたちに接することができるよう、給与の改善や働きやすい職場環境の整備は、待ったなしの課題です。

また、私の子どものようにアレルギーを持つ子、発達に特性がある子、外国にルーツを持つ子など、保育現場では、より専門的で、きめ細やかな配慮が必要なケースが増えています。すべての子どもが、その子らしく輝けるインクルーシブな保育環境を整えるためには、専門知識を持つ職員の加配や、保育士さん自身が学び続けるための研修機会の充実が不可欠です。

「品川区の保育は、質が高いね」。そんな評価が当たり前になるよう、これからは財源を「保育の質」の向上のために重点的に投資していくべきだと、私は強く考えます。

2. 多様なニーズに応える「子育て支援の選択肢」

私たちの働き方やライフスタイルは、一昔前と比べて驚くほど多様化しました。それなのに、子育て支援の形は、まだまだ画一的かもしれません。

  • 「週に2、3日だけ、短時間働きたい」
  • 「子どもが急に熱を出した!でも仕事は休めない…」
  • 「育児から少しだけ離れて、リフレッシュする時間がほしい」

こうした切実な声に応えるため、認可保育園という枠組みだけでなく、一時預かりや病児保育、休日・夜間保育といった、柔軟な保育サービスの拡充が求められます。必要な時に、必要なサポートを、誰もが気軽に利用できる。そんなセーフティネットを、地域の中にきめ細かく張り巡らせていく必要があります。

また、保育園に通っていない家庭、特に孤立しがちな未就園児の親子を支える視点も忘れてはなりません。子育ての悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう親御さんをなくすため、地域の児童センターや子育てひろばの機能を強化し、アウトリーチ型の支援を充実させていくことも、これからの重要なテーマです。

終わりに

品川区が踏み出す「第一子保育料無償化」という大きな一歩。これは、長年にわたる多くの方々の願いと、行政の努力が結実した、本当に価値ある成果です。

しかし、ここで立ち止まってはいけません。私たちは、この素晴らしい流れをさらに加速させ、品川区を、日本中の誰もが「ここで子育てをしたい」と心から思えるような街へと、進化させていく責任があります。

アレルギーを持つ子どもの育児に悩み、涙したあの日々。もし、今よりももっと気軽に相談できる場所があったなら。もし、経済的な不安が少しでも軽くなっていたなら。私の心は、どれだけ救われただろうかと、今でも思うことがあります。

だからこそ、私は、誰一人として子育てに孤独を感じることのない社会を、そして、すべての子どもたちが、その生まれ持った可能性を最大限に開花させられる社会を、この品川区から実現したい。

今回の無償化を、そのための力強い追い風として。

一緒に、新しい時代の扉を開きましょう。

あなたの子育ての「嬉しい」も「大変」も、ぜひ私に聞かせてください。皆さんの声の一つひとつが、品川の未来を創る、かけがえのない力になります。

品川区民とつくる未来 代表 新井さとこ

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