数字の裏にある現実。品川区のホームレス問題の現状と支援の取り組み

こんにちは。「品川区民とつくる未来」代表の、新井さとこです。

品川区が参加する東京都の調査によると、2024年1月時点の品川区内の路上生活者(ホームレス)の人数は「3名」と報告されています。

この数字だけを見ると、品川区ではホームレス問題はほとんど存在しないかのように思えるかもしれません。しかし、この数字はあくまで「日中に屋外で目視確認された人数」であり、その裏には数字だけでは捉えきれない、より複雑な現状と課題が隠されています。

今回は、品川区のホームレス問題の推移と現状、そしてどのような支援が行われているのかをご紹介します。

大幅に減少した路上生活者。その背景は?

まず、路上生活者の数は、過去と比較すると大幅に減少しています。23区全体で見ると、2000年代には数千人単位で確認されていましたが、現在では数百人規模にまで減りました。品川区も同様の傾向にあります。

これは、国や東京都、そして品川区が長年にわたり、様々な支援策を粘り強く続けてきた成果と言えます。自立支援センターの設置や巡回相談など、地道な取り組みが着実に実を結んでいるのです。

数字だけでは見えない「現状の課題」

一方で、この「3名」という数字に含まれていない、見えにくい困難を抱えた人々が存在することも事実です。

  • 「ネットカフェ難民」など住まいを失った人々:
    安定した住居はないものの、ネットカフェや友人宅などを転々としている人々は、路上生活者数の調査には含まれません。貧困の問題は、より多様化・複雑化しています。
  • 高齢化と社会的な孤立:
    路上生活に至る方の高齢化が進んでおり、健康上の問題を抱えているケースも少なくありません。また、長年の路上生活により社会的に孤立し、支援を受ける意欲を失ってしまっている方もいます。
  • 見えづらい女性や若者の困窮:
    DVや家庭内での不和など、様々な理由で居場所を失う女性や若者も存在します。彼・彼女らは危険を避けるために人目につかない場所で夜を明かすことも多く、問題が表面化しにくいという課題があります。

一人ひとりに寄り添う品川区の支援策

品川区では、生活に困窮し、安定した住まいを失った方々に対して、一人ひとりの状況に合わせた多角的な支援を行っています。その中心となっているのが「暮らし・しごと応援センター」です。

1. 暮らし・しごと応援センター(自立相談支援)

区役所内に設置されたこの窓口では、専門の支援員が生活に関するあらゆる困りごとの相談に乗ってくれます。

  • 一人ひとりに合わせた支援プランの作成: 相談者と一緒に課題を整理し、どうすれば生活を立て直せるか、具体的な支援プランを考えます。
  • 住まいの確保: 緊急で住まいが必要な方には、一時的な宿泊場所(シェルター)を提供したり、アパートを借りるための「住居確保給付金」の申請をサポートしたりします。
  • 仕事の支援: ハローワークと連携し、就労に向けた準備や仕事探しを手伝います。
  • 家計の立て直し: 家計の状況を「見える化」し、相談者自身でお金を管理できるよう、家計改善の支援も行います。

2. 巡回相談(アウトリーチ)

支援を待つだけでなく、こちらから手を差し伸べる「アウトリーチ」も重要な活動です。区の職員や委託を受けたNPO法人の相談員が定期的に区内を巡回し、路上で生活する方に直接声をかけます。

無理に施設への入所を勧めるのではなく、まずはお弁当やカイロを渡しながら対話を重ね、信頼関係を築くことから始めます。そして、本人が「生活を変えたい」と思ったタイミングで、必要な支援につなげていきます。

3. 関係機関とのネットワーク

区役所だけでなく、社会福祉協議会、NPO法人、医療機関など、様々な専門機関がネットワークを組み、一人の人を多方面から支える体制を築いています。


まとめ:私たちにできること

ホームレス問題は、特別な誰かの問題ではありません。病気や失業、家族との離別など、少しのきっかけで誰もが困難な状況に陥る可能性があります。

この問題に対して、私たちができることは何でしょうか。

まずは、偏見を持たず、正しい知識を持つこと。そして、品川区に「暮らし・しごと応援センター」のような頼れる相談窓口があることを知っておくだけでも、もしもの時に自分や周りの人を助ける一歩になります。

もし、生活に困窮している方を見かけ、支援が必要だと感じた場合は、お近くの福祉事務所や、品川区役所の担当窓口にご連絡ください。もしくは新井さとこでも構いません。その一本の電話が、誰かの未来を繋ぐきっかけになるかもしれません。

品川区民とつくる未来 代表 新井さとこ

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