【総事業費約706億円】なぜ今、品川区に新しい庁舎が必要なのか?税金の使い道を徹底解説

こんにちは。「品川区民とつくる未来」の新井さとこです。

さて、先日品川区の新庁舎建設計画について、その概要と総事業費が706億8500万円にのぼるというお話をさせていただきました。区民の皆様の税金が投入されるこの巨大プロジェクトに対し、「なぜ今、新しい庁舎が必要なの?」「まだ使えるのでは?」といった疑問の声や、「本当にそれだけの価値があるのか?」といったご意見をいただくことも少なくありません。

これらの声は、区政を自分ごととして捉えてくださっている証であり、大変嬉しく思います。だからこそ今回は、一人の納税者として、そして皆様の声を区政に届ける立場として、この新庁舎建設計画の「なぜ?」を徹底的に掘り下げていきたいと思います。

単なる「古いから建て替える」という単純な話ではありません。そこには、私たちの「安全」と「暮らしやすさ」、そして「未来の品川区」がかかっています。少し長くなりますが、ぜひ最後までお付き合いください。

第1章:限界に達した現庁舎 – 50年以上の歴史が物語る「老朽化」と「不便さ」

まず、現在の品川区役所がどのような状況にあるのか、その「リアル」を知ることから始めましょう。現在の本庁舎が竣工したのは1968年(昭和43年)。前回の東京オリンピックから4年後、日本が高度経済成長の真っ只中にあった時代です。以来、50年以上にわたり、品川区の行政の中心として機能してきましたが、その歳月は建物の至る所に深刻な影を落としています。

  1. 目に見える「老朽化」と、見えない「リスク」
    区役所を訪れたことがある方なら、建物の古さを感じたことがあるかもしれません。しかし、問題は見た目だけではありません。

設備の限界:
建築から半世紀以上が経過し、電気、空調、給排水といった基幹設備は軒並み耐用年数を超えています。頻発する小規模な修繕を繰り返す「もぐら叩き」のような維持管理は、年々コストを増大させており、根本的な解決には至っていません。

アスベストの問題:
旧耐震基準の時代に建てられた建物には、断熱材としてアスベストが使用されている箇所も存在します。大規模な改修を行う際には、その飛散防止対策に莫大な費用と時間を要するため、部分的な改修では対応しきれないのが現状です。

耐震性能への不安:
2011年に耐震補強工事が行われましたが、これはあくまで「倒壊を防ぐ」ための最低限の補強です。首都直下型地震のような大規模災害が発生した際に、区の防災司令塔として業務を継続できるレベルの耐震性(IS値0.75以上)は確保できていません。災害対策の拠点であるべき区役所そのものが、災害時に機能不全に陥るリスクを抱えているのです。

  1. 区民の「不便さ」を生む構造的な欠陥
    現庁舎の最大の問題の一つは、その複雑で分かりにくい構造にあります。区民アンケートでも、「建物が分かれていて利用しづらい」(77.7%)、「関連部署や窓口が分散し、動線が複雑でわかりづらい」(73.6%)といった声が大多数を占めています。

「たらい回し」の発生:
本庁舎、第二庁舎、第三庁舎と建物が分散し、さらに関連する課が異なる階に配置されているため、複数の手続きが必要な方はあちこちの窓口を行き来しなければなりません。特に、引っ越しや出産、介護といったライフイベントに関わる手続きでは、この「たらい回し」が大きな負担となっています。

誰一人取り残さない「バリアフリー」の欠如:
建設当時は「バリアフリー」という概念が一般的でなく、庁舎内の至る所に段差が残っています。エレベーターの数も十分とは言えず、車椅子やベビーカーを利用する方、ご高齢の方にとっては、庁舎内の移動そのものが困難です。区民アンケートでも「段差や階段が多く移動しづらい」という回答が67.3%にものぼり、誰もが安心して利用できる施設とは到底言えない状況です。

プライバシーと快適性の不足:
待合スペースは狭く、混雑時にはプライバシーに配慮した相談が難しい場面も少なくありません。また、授乳室やおむつ交換台といった子育て支援設備も不十分で、小さなお子さん連れの方々には心苦しい思いをさせてしまっています。

このように、現庁舎は物理的にも機能的にも限界に達しており、日々の修繕で延命させるだけでは、区民サービスの低下と将来的なリスクの増大を招くだけなのです。

第2章:なぜ「今」なのか? – 新庁舎に託された3つの使命

「老朽化は分かった。でも、なぜ今、706億円もかける必要があるの?」という疑問が次に湧いてくると思います。新庁舎建設は、単に古い建物を新しくする「建て替え」ではありません。これは、未来の品川区が直面するであろう課題に対応するための「未来への投資」なのです。新庁舎には、大きく分けて3つの重要な使命が託されています。

  1. 使命①:区民の命を守る「防災拠点」への進化
    首都直下型地震は、今後30年以内に70%の確率で発生すると言われています。その時、区役所は被災状況の把握、救援物資の供給、避難所の運営など、区民の命を守るための「司令塔」とならなければなりません。

最高レベルの耐震・免震構造:
新庁舎では、大地震の揺れを直接建物に伝えない免震構造を採用します。これにより、庁舎内の被害を最小限に抑え、地震発生直後から災害対策本部としての機能を維持することができます。

ライフラインの確保:
電気、ガス、水道が寸断されても、非常用発電機や大容量の貯水槽によって、最低7日間は自立して業務を継続できる計画です。これにより、外部からの支援が届くまでの間、区独自の災害対応活動を支えます。

情報拠点としての機能:
災害時には、正確な情報が区民の安全を左右します。新庁舎は、通信設備を強化し、防災行政無線やSNSなどを通じて、迅速かつ確実に情報を発信できる拠点となります。

現庁舎の耐震性では、この最も重要な使命を果たすことができません。区民の安全を確保するという行政の根幹的な役割を果たすためにも、強靭な防災拠点としての新庁舎は不可欠なのです。

  1. 使命②:時代の変化に対応する「デジタル化(DX)」の推進拠点
    私たちの生活にスマートフォンが欠かせなくなったように、行政サービスもまた、デジタル化の大きな波の中にあります。国も「デジタル庁」を設置し、行政手続きのオンライン化を強力に推進しています。

「行かない区役所」の実現:
新庁舎の整備は、単なるハコモノ作りではなく、区のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるための土台作りでもあります。各種証明書の発行や申請手続きの多くをオンラインで完結できるようにすることで、区民の皆様がわざわざ区役所に足を運ぶ必要がない「行かない区役所」を目指します。

「書かない窓口」の導入:
窓口では、職員が聞き取った内容をシステムに入力し、区民は内容を確認して署名するだけ、といった「書かない窓口」を導入します。これにより、手続きの時間が大幅に短縮され、待ち時間の解消につながります。

データに基づいた政策立案:
デジタル化によって収集された様々なデータを分析し、客観的な根拠に基づいた政策立案(EBPM)を進めます。これにより、より効果的で、区民ニーズに即した行政サービスを提供することが可能になります。

古い庁舎の構造では、こうした最新のデジタル技術を導入するためのインフラ(サーバー設備やネットワーク網)を十分に整備することが困難です。新庁舎は、未来の行政サービスを見据えたデジタル化の拠点となるのです。

  1. 使命③:誰もが輝ける「交流と協働」のシンボル
    新しい庁舎は、単なる手続きの場ではありません。区民が集い、交流し、新たな活動が生まれる「ひらかれた場所」であることが求められています。

究極のユニバーサルデザイン:
新庁舎では、段差を完全になくすことはもちろん、誰もが直感的に目的の場所にたどり着けるような分かりやすいサイン計画や、多様な人々に対応したトイレ(オールジェンダートイレ)の設置など、あらゆる人が快適に過ごせるユニバーサルデザインを徹底します。

区民協働のスペース:
区民が自由に利用できる会議室やイベントスペースを充実させ、NPOや地域団体の活動を支援します。行政と区民が連携し、共に地域の課題解決に取り組む「協働」の拠点を目指します。

環境への配慮(ZEB Ready認証):
新庁舎は、太陽光発電などの再生可能エネルギーを最大限に活用し、エネルギー消費を大幅に削減する「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」の認証取得を目指しています。環境に配慮した庁舎は、持続可能な未来に向けた品川区の姿勢を示すシンボルとなります。

第3章:私たちの税金、私たちの未来 – 納税者としての監視の目

ここまで新庁舎の必要性についてお話ししてきましたが、それでもなお「706億円」という金額は非常に重いものです。この決断が本当に正しかったのかは、今後のプロセスにかかっています。

議会でも、この建設計画については様々な意見が交わされ、建設費の高騰を懸念する声や、現庁舎のさらなる延命を模索すべきだという反対意見もありました。最終的には賛成多数で可決されましたが、これはあくまで「スタートライン」です。

大切なのは、この莫大な税金が、一円たりとも無駄になることなく、計画通りに区民の利益となる形で使われるかを、私たちが厳しく監視していくことです。

コストの透明化:
今後、設計が進む中で、資材価格の変動などにより事業費がさらに膨らむ可能性も否定できません。区に対しては、徹底した情報公開と、コスト削減への最大限の努力を求めていきます。

「建てない」という選択肢のコスト:
一方で、もし今回建て替えを選択せず、現庁舎の維持管理を続けた場合のコストも考える必要があります。年々増加する修繕費、大規模改修の際に必要となる莫大なアスベスト対策費、そして何よりも、大災害時に庁舎が機能不全に陥った場合の損失は計り知れません。今回の計画は、将来発生するであろうこれらの「見えないコスト」を回避するための投資でもあるのです。

私、新井さとこは、区民の皆様の代表として、このプロジェクトが完了する最後の一日まで、そのプロセスを厳しくチェックし、進捗状況を皆様に分かりやすく報告していくことをお約束します。

まとめ

新庁舎建設は、50年に一度の大きな事業です。それは、単に老朽化した建物を新しくすることではありません。

それは、災害から区民の命を守る「砦」を築くこと。
それは、未来の行政サービスに対応する「基盤」を整えること。
そして、多様な人々が集い、繋がる「広場」を創ること。

この706億円という投資を、未来の品川区民から「あの時の判断は正しかった」と評価してもらえるものにできるかどうかは、これからの私たちの取り組みにかかっています。

この問題について、ぜひ皆様のご意見をお聞かせください。皆様と共に考え、品川区の新しい時代を築いていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

品川区民とつくる未来 代表 新井さとこ

ご意見やご相談はこちらから