「親の介護」と「私の仕事」。ひとりで抱え込まない「ケアラー支援」とワークライフバランスの実現

こんにちは。「品川区民とつくる未来」代表の、新井さとこです。

最近、実家の親の様子が少しおかしい。

  • 病院の付き添いが増えて仕事を早退することが増えた
  • ある日突然、親が倒れた。明日からの生活はどうなる?

40代、50代、子育てがようやく一段落した、あるいは仕事で最も重要な役職を任され、まさにこれからという時。突然、しかし確実に、多くの人が直面する問題。

それが「親の介護」です。

これは、決して他人事ではありません。品川区で暮らし、働く私たち全員にいつ訪れてもおかしくない「現実」です。

  • 親のことは、家族がみるのが当たり前
  • 仕事に穴をあけるわけにはいかない
  • 私がしっかりしなくては

その強い責任感から、仕事と介護の「ダブルワーク」をひとりで必死にこなし、心身ともにすり減っている方がこの品川区にも大勢いらっしゃいます。こうした「介護を担う家族(ケアラー)」は、しばしば社会から見落とされがちです。私はこの状況を根本から変えたい。

介護を個人の「自己犠牲」や「根性論」に依存する社会から地域全体で支え分かち合う社会へ。「親の介護」と「私の仕事・人生」のどちらかを選べという、残酷な二択を迫らない。そのための具体的な仕組みが品川区には必要不可欠です。

今日は、なぜ今「ケアラー支援」が急務なのか、そして「介護離職」を防ぎ、真のワークライフバランスを実現するために、品川区が何をすべきか、私の考えをまとめてみたいと思います。

1. 「介護離職」という静かで深刻な社会の損失

「子育て」と「介護」は、家族をケアするという点で似ています。しかし、決定的に違う点がいくつかあります。

  • 予測不可能性:介護は、ある日突然始まります。親の骨折、脳梗塞、認知症の診断。準備期間はありません。
  • 終わりが見えない:子育てには「卒業」がありますが、介護は数年、時には10年以上続く「終わりが見えないマラソン」です。
  • 社会的な孤立:子育ては「おめでとう」と祝福され、公園や学校という「コミュニティ」があります。しかし介護は「お疲れ様」と同情され、話題にしづらく、社会から孤立しやすい側面があります。

この過酷な状況が最も働き盛りである世代を直撃します。総務省の調査では、日本では年間約10万人が介護・看護を理由に仕事を辞めています。俗にいう「介護離職」です。

40代、50代のベテラン社員。管理職や中核人材として会社や社会に最も貢献できるはずだった人々がキャリアを手放さざるを得ない。これは個人の人生の損失であると同時に、企業にとってもそして品川区の経済にとっても計り知れない損失です。そして、この負担は残念ながら未だに女性に偏っています。

「M字カーブ」(出産・育児期の離職)を乗り越えた女性たちが、次に直面するのが「介護の壁」なのです。「親の介護は、娘(嫁)の役割」そんな古い価値観が、今なお根強く残っています。パートや非正規雇用で働く女性が多いため「正社員の夫より、私が休む(辞める)しかない」と消極的な選択を迫られるケースも後を絶ちません。これでは女性活躍も、ジェンダー平等もスローガン倒れです。

2. 「ケアラー(介護者)」自身が支援を必要としている

今、日本の介護制度は「介護保険」という素晴らしい仕組みに支えられています。しかし、その制度はあくまで「介護が必要な人(要介護者)」を対象としています。では、「介護する人(ケアラー)」は誰が支えるのでしょうか。

  • ケアマネジャーさんとの打ち合わせ
  • 山のようにある申請書類の作成
  • 病院やデイサービスの送迎
  • 夜中のトイレ介助による睡眠不足
  • 認知症の親からの暴言に、心が折れそうになる

介護者はマネジメント、事務、送迎、肉体労働、そして感情労働のすべてを24時間体制で引き受けています。その結果、介護者自身が心身を病みうつ状態になったり、倒れてしまったりする「共倒れ」の危険性すらあるのです。私は、介護者を「支援する側」としてだけではなく、「支援を必要とする当事者」として明確に位置づけるべきだと考えます。

3. 品川区の「現状の課題」と「制度の隙間」

品川区にも、もちろん「地域包括支援センター」があり介護相談の窓口は存在します。しかし、当事者の方々からは、切実な「隙間」の声を聴きます。

  • 課題1:「情報」の迷子になる
    「親が倒れて、まずどこに電話すればいい?」
    「介護保険の申請が、複雑すぎて分からない」
    「区役所、包括センター、病院…窓口がバラバラで、同じ話を何度もする」
    情報が点在したらい回しにされる現状は不親切です。
  • 課題2:「制度」では埋まらない隙間
    介護保険のサービスは、時間や内容が厳格に決まっています。
    「朝の会議に出るための、2時間だけ預かってほしい」
    「急な出張が入った。でもショートステイは予約で満床」
    「通院の付き添いだけでなく、その後の買い出しも手伝ってほしい」
    こうした、働くケアラーの「今ここだけ」という切実なニーズに公的サービスは柔軟に対応しきれていません。
  • 課題3:「企業」の理解不足
    国の「介護休業制度」は最長93日。しかし介護は93日では終わりません。
    休みを取ったら昇進が遠のく
    『介護』と言い出せず『体調不良』と嘘をついて休んでいる
    職場の無理解や「お互い様」とは言えない雰囲気がケアラーを追い詰めています。

4. 新井さとこが考える「品川区ケアラー支援」の3本柱

「介護離職ゼロ」の品川区へ。

私は、ケアラーが仕事と介護を両立し自分自身の人生も大切にできる仕組みを品川区主導で構築すべきだと考え以下の3本柱を推奨できないかと思っております。

提案1:『ワンストップ』で支える(品川区ケアラー支援ハブの創設)

情報と支援の「迷子」をなくします。介護が始まった初期段階から、継続的にケアラーに寄り添う「品川区ケアラー支援ハブ(仮称)」の設置を提案します。これは単なる相談窓口ではありません。

  • 伴走型コンシェルジュ:ケアラー一人ひとりに専任の相談員がつき、複雑な介護保険の申請代行から区内サービスの検索・予約、病院との連携まで一気通貫で「伴走」します。
  • ケアラー自身のケア:介護者自身のための「メンタルヘルス・カウンセリング」や「健康相談」を無料で提供します。
  • ケアラーズカフェの運営:同じ悩みを持つ介護者同士が出会い、情報交換し孤立を防ぐ「居場所(ケアラーズカフェ)」を区内各所に設置・支援します。

「あそこに行けばなんとかなる」

そう思える「安心の拠点」を品川区につくれたらと思うのです。

提案2:『隙間』を埋める(品川区独自の柔軟な介護サポート)

公的サービスでは手が届かない「隙間」こそ、基礎自治体である品川区が埋めるべき。

  • 「品川区ケアラー・レスパイト(休息)バウチャー」の導入
    ケアラーが休息(レスパイト)を取るための費用を助成し、「公的サービスが使えない早朝・夜間」や「急な残業」の際に、民間のシッターサービスや家事代行サービス、配食サービスなどを利用できるバウチャー(利用券)を配布し「私が休むとお金がかかる」という罪悪感を軽減し「休むことも介護の一環」という文化を作る。
  • 「緊急ショートステイ枠」の確保
    ケアラーの急病や出張など、緊急事態は必ず発生します。区内の介護施設と協定を結び「緊急時にケアラーが利用できるショートステイ枠」を行政が一定数確保し、必要な時に必要な人が使える仕組みの構築。

提案3:『職場』を変える(介護に強い企業を品川区が育てる)

ケアラーが働き続けるには企業の理解が不可欠で、品川区が企業文化の変革をリードする。

  • 「品川区ワーク&ケアラー支援企業」認証制度の創設
    介護と仕事の両立支援に積極的に取り組む区内企業を「認証」し、区の広報や入札などで優遇します。
    (例:介護のための柔軟なリモートワーク、フレックスタイム、短時間勤務を導入している。管理職向けの介護セミナーを実施)「人を大切にする企業」が評価される仕組みを作り、区内企業全体の意識改革を促す。
  • 中小企業への「介護両立コンサルティング」
    大企業と違い、ノウハウのない中小企業こそ支援が必要です。区から社会保険労務士や専門家を派遣し、各企業の状況に合わせた「介護休業規程の整備」や「助成金の活用」を無料でサポートする。

5. 「介護」を「個人の物語」から「地域の物語」へ

親を想う気持ち、仕事を全うしたい責任感。そのどちらも、私たちが人間らしく生きるためにとても大切なものです。介護は誰かが一方的に「犠牲」になることではありません。それは、人生の先輩から「生き方」を学び、家族の絆を再確認し、そして地域社会の「支え合い」の力を試される、重要な時期でもあります。

「介護は、家族だけで抱え込むもの」

この古い常識を品川区から変えていきましょう。あなたの「大変さ」をひとりで抱え込まないでください。

「助けて」と言える社会。
「大丈夫、私たちがいる」と応えられる地域。
それこそが私が目指す「品川区民とつくる未来」です。

あなたの貴重なご経験、ご意見、そして「声にならない声」をぜひ新井さとこにお聞かせください。一緒に、誰もが安心して働き、暮らし続けられる品川区をつくっていきましょう。

品川区民とつくる未来 代表 新井さとこ

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