不安なマタニティ期に、もう一人じゃない。品川区の『伴走型支援(妊婦支援)』が心強すぎる。

こんにちは。「品川区民とつくる未来」代表の、新井さとこです。

1. はじめに

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

街路樹の葉が少しずつ色づき始め、ベビーカーを押しながらのお散歩が心地よい季節になりましたね。公園で聞こえる子どもたちの元気な声や、お腹を愛おしそうに撫でながら歩く妊婦さんの姿を目にするたび、私は胸が温かくなります。

その一方で、ふと、遠い日のことを思い出すのです。

今では元気に育ってくれている、たった一人の我が子。その子を産んだ日のことを、私は一生忘れることができません。

長い長い陣痛の末の、難産でした。体は張り裂けそうで、意識が遠のいていく。もうダメかもしれない。心からそう思いました。なんとか無事に出産を終え、我が子を胸に抱いた時の喜びは、もちろん言葉にできません。でも、その喜びと同じくらい、いえ、それ以上に大きな「闇」が、すぐそこに待ち受けていました。

産後うつ、そして育児うつでした。

ホルモンバランスの急激な変化に、心と体がついていかない。24時間続く授乳と寝不足で、思考力はほとんどゼロ。理由もなく涙が溢れ、あんなに愛おしいはずの我が子を可愛いと思えない瞬間がある。そんな自分を「母親失格だ」と責め続け、社会からたった一人、切り離されてしまったような深い孤独感に苛まれました。

「助けて」の一言が、言えない。

いや、誰に、どう助けを求めればいいのかすら、分からない。

暗いトンネルの中を手探りでさまようような、本当に苦しい時間でした。

だからこそ、今の品川区の妊婦さんを取り巻く環境を知った時、私は心から「羨ましい」と、そして「本当に良かった」と思ったのです。もし、あの時の私に、今の品川区のようなサポートがあったなら。私の心は、どれだけ救われただろうかと。

今回は、品川区が誇る「伴走型相談支援」について、私の経験も交えながら、その温かさと心強さをお伝えしたいと思います。


ただお金を渡すだけじゃない。品川区の支援が「温かい」理由

今、品川区では、妊娠期から出産、子育て期まで、切れ目のないサポートを提供する「しながわネウボラネットワーク」という体制が整っています。「ネウボラ」とは、フィンランド語で「アドバイスの場」という意味。その名の通り、妊婦さん一人ひとりに寄り添い、まさに「伴走」してくれるような支援が特徴です。

その中核となるのが「伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施」という事業です。

1. 合計10万円の経済的支援

まず、経済的な不安を大きく和らげてくれるのが、給付金の存在です。

  • 妊娠届出時:5万円(出産応援ギフト)
  • 出産後の赤ちゃん訪問時:5万円(子育て応援ギフト)

合計で10万円が支給されます。ベビー用品の購入や、産後ケアサービスの利用など、何かと物入りな時期に、この支援は本当にありがたいですよね。

しかし、私が「心強い」と感じるのは、お金以上に、その「もらい方」にあります。

2.「孤独」にさせないための専門家との面談

この給付金を受け取るためには、妊娠届出時と出産後の2回、保健師や助産師といった専門家との面談が必要になります。

「え、面談しないともらえないの?」と、少し面倒に感じる方もいるかもしれません。でも、これこそが品川区の支援の、最も温かい部分なのです。

私が産後うつで苦しんでいた時、一番欲しかったのは、お金よりも「誰かに話を聞いてもらうこと」でした。「眠れてる?」「食事はとれてる?」「何か不安なことはない?」。そんな何気ない一言を、専門的な知識を持った誰かにかけてもらえるだけで、張り詰めた心の糸は少しだけ緩むのです。

この面談は、給付金のための事務手続きではありません。それは、区が妊婦さん一人ひとりに対して「あなたは一人じゃないですよ。私たちは、いつでもあなたのそばにいますよ」というメッセージを伝えるための、大切なコミュニケーションの機会なのです。

妊娠中の体の不調、出産への恐怖、産後の育児の悩み。どんな些細なことでも、安心して話せる場所がある。この「安全基地」の存在が、かつての私のように、社会から孤立し、一人で悩みを抱え込んでしまう母親を、どれだけ救うことか計り知れません。


産んだ後も、ずっと続く「見守り」の眼差し

出産はゴールではありません。本当の戦いは、そこから始まります。品川区の伴走型支援は、もちろん産後も続きます。

保健師や助産師が自宅を訪問してくれる「すくすく赤ちゃん訪問」では、赤ちゃんの体重測定や健康状態のチェックだけでなく、お母さんの心と体のケアも丁寧に行ってくれます。授乳がうまくいかない、赤ちゃんの泣き声が辛い、パートナーとの関係がギクシャクしている…。そんな、誰にも言えないような悩みも、ここでは安心して打ち明けることができます。

さらに、品川区のユニークな取り組みに「見守りおむつ定期便」があります。これは、毎月1回、おむつなどの育児用品を配達員が自宅まで届けてくれるサービスです。一見すると単なる物品支給のようですが、その本当の目的は、配達員との何気ない会話を通して、家庭が社会的に孤立していないかを、さりげなく見守ることにあります。

「こんにちは、今月もお届けものです!」「赤ちゃん、少し大きくなりましたね!」

そんな短いやり取りが、一日中赤ちゃんと二人きりで過ごす母親にとって、どれほど貴重な社会との接点になるか。この制度を考えた人は、本当に母親の孤独を理解しているのだと、胸が熱くなります。


終わりに

あの日、暗い部屋で一人、我が子を抱きながら泣いていた私に、もし今の品川区の保健師さんが「大丈夫だよ」と声をかけ、私の話をただ黙って聞いてくれたなら。

きっと、私の心は少しだけ軽くなり、「母親失格だ」なんて自分を責めずに済んだかもしれません。

子育ては、母親一人が背負うものでは決してありません。パートナーと、そして地域社会全体で、その尊い営みを支えていくべきです。品川区の「伴走型支援」は、まさにその理想を形にした、温かい光のような制度だと私は思います。

これから出産を迎える皆さん。どうか、一人で頑張りすぎないでください。品川区には、あなたのすぐそばで、あなたと赤ちゃんの物語に寄り添い、伴走してくれる人たちがいます。遠慮なく、その温かい手を頼ってください。

そして、私たち地域社会もまた、未来を担う大切な命を育むお母さんたちを、温かい眼差しで見守り、支えていく。そんな優しい街を、皆さんと一緒に創っていきたいと思います。

品川区民とつくる未来 代表 新井さとこ

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